歯のホワイトニングは、口元の印象を変える方法のひとつです。白く輝いた歯は、清潔感があり、好印象につながります。
しかしホワイトニングを行う上で、なぜホワイトニングを行うと歯が白くなるか、具体的な仕組みを知らないと安心できないという人も多いかもしれません。
そこでこの記事では、ホワイトニングで歯が白くなる理由やホワイトニングできないケースを取り上げます。ホワイトニングを考えている方は、しっかりチェックしておきましょう。
どうして歯は黄色くなってしまうのか?
歯が黄色くなってしまう原因は主に2つあります。
食品やタバコによる着色
1つ目は、食べ物・飲み物・タバコなどの外部からの着色です。食物に含まれているポリフェノールなどが唾液の中のタンパク質と結合した汚れのことを「ステイン」といいます。
ステインはとくに、色が濃い種物や飲み物に多く含まれています。たとえば、カレーやキムチ、コーヒーや赤ワインなどがあるでしょう。
また、タバコの「ヤニ」はステインよりも粘着力が高く、さらに歯を黄ばませます。これらは、時間が経つと歯の表面を覆うエナメル質まで浸透していきます。その結果、歯が黄色になってしまうのです。
加齢
一般的に、年齢を重ねると歯が黄色くなっていきます。
これは、歯の表面を覆っている半透明のエナメル質が加齢とともにすり減っていき、反対に歯の内部にある象牙質の色が現れるからです。象牙質は黄みがかっているため、歯を黄色く見せてしまいます。
抗生物質
抗生物質の服用が歯を黄色くさせることもあります。
「テトラサイクリン」という抗生物質は、歯の形成時期に服用していた場合、歯が黄色くさせてしまうことがあるといわれています。
ホワイトニングで歯が白くなるのはどうして?
黄ばんだ歯も自然に白く、明るく見せてくれるホワイトニング。
その理由と仕組みを理解しておきましょう。
ホワイトニングで歯が白くなる理由
ホワイトニングで使用される薬には、過酸化尿素や過酸化水素などの成分が含まれます。これらの成分には、歯に着色した汚れを分解し無色透明にする効果(ブリーチング効果)があります。
また加齢で黄色くなった歯に対しては、ブリーチング効果とともにマスキング効果を用いて、歯を白く見せていきます。マスキング効果とは、過酸化水素や過酸化尿素がエナメル質の構造をすりガラス状に変化させ、光の乱反射を起こすことで象牙質の色を見えにくくする方法です。
このように、ホワイトニングではブリーチング効果とマスキング効果を用いて、歯を白くさせていきます。
ホワイトニングは誰でも効果が出る?
実は、ホワイトニングを行っても効果が出にくい人もいます。
たとえばフッ素コーティングしている人。虫歯予防に効果的なフッ素ですが、フッ素はホワイトニング剤が歯に浸透するのを妨げてしまいます。
フッ素が含まれている歯磨き粉は人気が高く、使用している人も多いでしょう。虫歯のないきれいな歯を目指す人にはおすすめですが、ホワイトニング剤との相性はよくありません。
フッ素コーティングしている歯にホワイトニングをしても、効果が実感しにくくなるため、できるだけホワイトニングの後にするようにしましょう。
着色成分が強くこびりついている人、歯垢がある人もまた、ホワイトニングの効果を感じにくいでしょう。また歯垢が歯に付着しているとホワイトニング剤が歯に浸透しにくいため、まず歯石取りから始めることをおすすめします。
歯石を取った後にホワイトニングすると、充分な効果を感じられるはずです。
ホワイトニングができない人もいるの?
効果が出にくい人だけではく、ホワイトニング自体できない人もいます。
どんな人がホワイトニングできないのでしょうか。以下で説明します。
歯に詰め物をしている
ホワイトニングは天然の歯に対して行います。
歯とは異なる構造をした「詰め物」や「差し歯」には、ホワイトニングができません。
また詰め物や差し歯がある状態でホワイトニングした場合、天然の歯は白くなるものの、詰め物自体には何の変化も出ないでしょう。
口の前面に詰め物や差し歯がある場合は、目立ってしまうことがあるので注意してください。
無カタラーゼ症の患者
無カタラーゼ症とは、ホワイトニングの主要成分である過酸化水素を分解し、無毒化できる酵素「カタラーゼ」が先天的に欠乏している常染色体劣性遺伝疾患です。このような、無カタラーゼ症を持っている人には、ホワイトニングができません。
ホワイトニングでは、過酸化尿素や過酸化水素を含んだ薬剤を使用します。もしカタラーゼがない人がホワイトニングするならば、過酸化水素を分解できず、体内に残すことになってしまうでしょう。
その結果、口腔内に壊疽潰瘍を作ってしまう恐れもあります。体内に長時間残しておくと、組織を壊死させてしまうこともあり得るのです。そのため、無カタラーゼ症の方にとってホワイトニングは危険な行為となってしまいます。
歯の神経が生きていない
ホワイトニングは、神経が死んだ歯には対応していません。
歯の神経が死んでしまった歯は、時間の経過と共に歯の色が変化していきます。神経が死んでしまった歯にホワイトニング剤を塗ったとしても、天然の歯と同じように白くできません。
ただし神経が死んでいる歯でも、被せ物を使用やウォーキングブリーチという方法で白くすることもできます。ウォーキングブリーチとは、歯の内側に専用の薬剤を入れて歯の内側から白くする方法です。
虫歯治療のために神経をとっている人は、虫歯が進行して神経が死んでしまっている人は、まず歯科医に相談してみましょう。
妊娠中や授乳中の女性
妊娠中や授乳中の女性は、ホワイトニングを控えてください。
ホワイトニングによる母体や赤ちゃんへの影響に関しては、厳密にはわかっていません。また、妊娠中や授乳中は、本来の体の状態とは違っています。元気なときだと何も感じないことでも、敏感に反応が出ることもあるのです。
母体や赤ちゃんに対して安全性が解明されていないうちは、ホワイトニングを避けましょう。
ホワイトニングの費用相場は?
ホワイトニングは、大きく分けて4つの種類があります。
ここでは、それぞれの費用相場と特徴を紹介します。
オフィスホワイトニング
オフィスホワイトニングは歯科医院で歯のチェックや事前クリーニングを行ったうえで実施するホワイトニングで、費用相場は10,000円〜70,000円程度となっています。
専用の薬剤や機器を使用するため、ホワイトニング効果を実感しやすいというメリットがあります。施術によっては、元の歯よりも白くすることも可能です。歯科医院によって、使用する薬剤や機械にも違いがあるため料金もさまざまとなります。
施術時間は大体30分〜1時間ほどです。オフィスホワイトニングの効果の持続期間は3〜6ヶ月程度ですが、効果を高めるためには定期的な施術が必要になります。
結婚式など、特別な日の前に利用するのもおすすめです。
ホームホワイトニング
ホームホワイトニングは、歯科医院でマウスピースを作成し、そのマウスピースに自分で薬剤を塗って装着するホワイトニング方法です。
マウスピース装着時間は、1日のうちの1〜2時間程度で、効果を実感するまでに早くて2週間ほどかかります。家で簡単にホワイトニングできるのはメリットといえるでしょう。
マウスピースを作る費用は15,000円〜40,000円ほど、薬剤がおよそ1週間分で5,000円ほどかかります。
効果が出るまでに2週間かかると想定すると、費用相場は25,000円〜50,000万円程度。またホームホワイトニングは、内側の象牙質の黄ばみから徐々に白くしていく方法なので、半年〜1年程度と比較的長い間、白い歯を維持できます。
デュアルホワイトニング
デュアルホワイトニングは、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用する方法で、費用としては50,000円〜80,000円ほどかかります。
高額になると、100,000円を超える場合も。まず歯科医院で薬剤を使用したホワイトニングしてもらい、その後、自宅でマウスピースを装着します。
2種類の方法を合わせてするため、より高いホワイトニング効果を実感できること間違いありません。効果期間も最も長く、1〜2年ほど持続します。決して安い施術ではありませんが、持続性がありながらも、高いホワイトニング効果を得たい人にはおすすめです。
セルフホワイトニング
セルフホワイトニングの費用相場は、数百円〜5,000円ほどです。
自宅でのホワイトニングには、さまざまな種類があります。市販のホワイトニング用の歯磨き粉や、歯の消しゴム、歯のマニキュア、マウスウォッシュ等でケアすることが可能です。
費用は製品によっても異なりますが、高額になるとしても数千円程度で済みます。
ただし効果も製品によって異なるため、確実な効果を求めるなら他の方法をおすすめします。
まとめ
私たちは普段意識せずに、歯を着色させるものを口にしています。そのため、鏡を見て歯の黄ばみに驚くこともあるのではないでしょうか。
歯の印象を大きく変化させるホワイトニング。しかし、誰にでも効果が出るわけではありません。
フッ素コーティングしている人や歯垢がある人は、ホワイトニングしたとしても効果が得られないことが多いでしょう。しかし、多くの人にとって歯の黄ばみを落とすホワイトニングは効果的です。
とくに、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用する、デュアルホワイトニングは持続性があるホワイトニング方法です。費用としては決して安くはありませんが、高い効果を実感できること間違いありません。
この記事は私が監修しました
田邊 俊成
椿クリニック 院長